施工事例
計画地は分譲地が密集したエリアの一画に位置しており、多種多様の住宅に取り囲まれている為、周囲に馴染みながらもそこだけが独立したような空間を目指した。
土地選定時より南面からの陽当たりを多く確保したいというご希望に対し、熟考を重ねご要望の本当のニーズは、「光」そのものではなく、それがもたらすことによる内面的な温かみのある暮らしではないかと仮定した。
「隣地からの視線を気にせず、室内でも庭先でも開放感が得られる暮らし、家族との一体感を感じる繋がりある暮らし。」
このように定義付けをし、設計を進めた。
建物の形状が2段階折れることで庭を包み込むような形状とし、暮らしの中に庭が溶け込むようにご提案。
杉板コンクリ塀と植栽が外部からの視線を遮る役割を果たし、カーテンやブラインドだけでプライバシーを守る生活から距離を置いた。
庭は丘陵状にして高低差を生み、デッキと庭木の間には余白を設け、「植えられた」という人為的さを植栽から取り除くことに注力し、自然が身近により近い生活を実現した。
南面は大開口のサッシに対しそこに深い軒を延ばし、夏の日差しを遮り、冬の暖かい陽だまりを内へ招き入れる。樋無しとすることで屋根先がよりシャープになり、ファサード(外観)の意匠性を向上させた。
この屋根から滴り落ちる雨も景色の一部となり、ウッドデッキは庭と相まって、四季を十分に愉しめる居場所となった。
子育て世代においては特に、同一空間で生活しなければ目が行き届かない場合が多々ある。
2列型キッチンを採用し、加熱器を背面にすることで料理をしながらリビング全体、庭全体を視界良く見渡せるようになり、お子さまがどこへいても目が行き届くように配慮。
住まいの中に気配を感じ合いながらも、色んな居場所がある。そんな生活をイメージして廊下に設けた書斎スペースは、リビングから窓越しに庭を経由して見える位置に配置。
お子さまの学習スペースとしてだけではなく、ご主人のワークスペース、奥様のカフェタイムとして。さらに新たな利用形態はこれから見つけていってもらえたら嬉しい。
家事動線や収納に関しても、収納物の寸法や種類、利用頻度を確認しながら住み手が優しさを随所に感じて頂けるよう工夫を重ねた。日常のなかで住みやすさを直に感じる部分である、と改めて考える機会となった。



